ベルサイユ宮殿✨🏰の巻 第3章 花を愛したマリー・アントワネット
「マリー・アントワネットは何を食べていたのか
ヴェルサイユの食卓と生活」
ピエール=イヴ・ボルペール 著
ダコスタ吉村花子 訳
原書房 発行
この本の序章である「はじまりの一皿」に、
「・・・マカロンはどうだろう?2006年公開のソフィア・コッポラ監督『マリー・アントワネット』では、シャンパーニュと共に目立つ位置に置かれていたが、現在のような形をしていたと考えるのは、キルスティング・ダンストがロック音楽を背景に演じるファッション中毒の王妃像を真実だと信じるのと同じくらい、時代を混同している。アントワネットが実際に口にしたマカロンとは、ラデュレのそれではなく、「マカロン姉妹」というあだ名で呼ばれていたナンシーの聖体会修道院に所属する2人の修道女が作ったもので、小さく、ひび割れていて、でこぼこした生地の中にはクリームも詰められていない。つまり、アントワネットは単なる王妃ではなく、マーケティングに基づいた非常に収益力のある商品であり、だからこそ多少の歴史的事実の歪曲も許されるというわけだ」
という文章があります。
納得です。
監督 ソフィア・コッポラ
主演 キルスティン・ダンスト
原作 アントニア・フレイザー
2006年
サブタイトルは「恋をした、朝まで遊んだ、全世界にみつめられながら」
マリー・アントワネットを一人の少女として描いた青春映画のような作品です。
第79回アカデミー賞で衣装デザイン賞を受賞しました。
ラブリーなDVDケースが素敵です。
2006年ソフィア・コッポラの映画「マリー・アントワネット」とのコラボレーションが話題になった、パリの老舗パティスリーメゾン「ラデュレ」シャンゼリゼ店で「FETES GALANTES(ベルサイユ宮殿舞踏会)」当日、朝食をとりました。マカロンではなく、チョコレートケーキと紅茶をいただきました。ケーキ1個と紅茶一杯で6,000円近く支払いましたが、薔薇で飾られた、うっとりするような店内の装飾が見れたので良しとします。ラデュレは女子の憧れです。
「花を愛する君に、この花束を贈る」という言葉とともに、ルイ16世がアントワネットに贈ったといわれる離宮プチ・トリアノン。宝飾品商マイヤールが制作した531個のダイヤモンドがきらめくトリアノンのマスターキーを受け取ったアントワネットは、堅苦しい宮殿生活から逃れ、遊び仲間のポリニャック夫人やランバル夫人、仕立て屋のローズ・ベルタン、髪結師レオナール、画家ヴィジェ・ルブランら、お気に入りだけを集めてパーティ、音楽会、芝居やゲームに興じるプライベートパレスにしていきます。ここでの全ての権限は王妃にあるため、王妃の許可や個人的な招待がなければ入ることはできず、国王であるルイ16世でさえ、客人として扱われたといいます。フェルゼン伯爵が頻繁に出入りしたのもこのプチ・トリアノンです。アントワネットの代名詞となっているような、優雅で華麗かつ自由奔放な生活が、革命が勃発する1789年までの15年間続けられることになります。
フランソワ・ブロシェ制作の鋳物鉄とブロンズ製手すりのある階段を上がって
最初の部屋である「第一控えの間」に飾られている「バラを持つ王妃マリー・アントワネット」 はヴィジェ・ルブランの代表作です。「プチ・トリアノンのモナリザ」と称される門外不出の肖像画です。
実は、「ゴール・ドレスを着たマリー・アントワネット」が先に描かれ、1783年サロンに出品されたのですが、その肌着のような装いが物議をかもし、すぐに、この作品が描かれ差し替えられました。アントワネット25歳の肖像です。
「ゴール・ドレスを着たマリー・アントワネット」
本拠地をベルサイユ宮殿からプチ・トリアノンに移したアントワネットは、プライベートな場所だからと、コルセットで固めたドレスではなく、ゆったりとくつろぐことのできるドレスに着替え、髪も高く結い上げるのではなく自然におろし、麦わら帽子を被ることもありました。
プチ・トリアノンの中で、最も大きい部屋「お供の間」アントワネットが心許せる寵臣や貴族たちと音楽会、ゲームを楽しんだ部屋です。
家具のほとんどはパリで最も有名な家具職人のリズナーに注文し、椅子は王の椅子職人であるジョルジュ・ジャコブが担当しました。アントワネットはどんなに些細な装飾や家具類にも自分の趣味を反映させました。花に囲まれることを愛し、壁掛けやカーテン、ベッドカバー、磁器や七宝細工まで花柄のものを作らせました。
すべて、高価な素材で作られたものばかりでした。アントワネットの決断の速さ、贅沢ですが、センスの良さには人々が目を見張るものがありました。
「フランスの手仕事、名品の物語 マリー・アントワネットが愛した職人技」
石澤季里 著
大修館書店 発行
「なかでも、ルイ16世の椅子職人、ジョルジュ・ジャコブの傑作である「麦穂の家具」は圧巻でした。張り地に王妃が日毎用いていたセーブル陶磁器と同じ矢車草とバラが刺繍され、椅子の背もたれは名彫刻家J・B・S・ロデによって松ぼっくり、アイビー、ジャスミンが彫られていました。
「フランス手仕事、名品の物語 マリー・アントワネットが愛した職人技」より引用しました。
「映画『マリー・アントワネットに別れをつげて』のなかで、レア・セドゥ演じる読書係が得意の刺繍をきっかけに、王妃の関心を引く側近になっていくというシーンがありました。当時の刺繍は金銀、絹糸がふんだんに用いられていてそれはそれは贅沢で美しく、刺繍家は、芸術的センスと匠の技を修得するアーティストとして一目置かれていました」
「フランスの手仕事、名品の物語 マリー・アントワネットが愛した職人技」の第1章刺繍より引用しました。
読書係の女性が刺繍していたのは「ダリア」の花でした。
「マリー・アントワネットに別れをつげて」
監督 ブノア・ジャコー
主演 レア・セドゥ (読書係)
2012年
バスティーユ襲撃やフランス革命勃発を知る術のないマリー・アントワネットに仕える女官たちを「フランス革命の裏側」と捉え、何が起こったか分からず、情報通の貴族に聞いて推測するしかない女官たちの不安な気持ちが描かれていて興味深かったです。一番印象的だったのは、処刑される貴族のリストに自分の名前があるのを知った年老いた女性貴族が、驚愕し失神するシーンです。
プチ・トリアノンに展示してあった花柄のお皿です。有名な「矢車菊に白い真珠」ではなく矢車菊に赤い真珠と金で装飾されています。
「マリー・アントワネットの伝記を書いたゴンクール兄弟のおかげで、1788年に王妃がトリアノンで催した夕餐のメニューは現代に至るまで保管されている。驚くほどの品数だが、フランス式サービスにおいては、料理は一度に供されていた点に留意が必要である。
このときの招待客の数は40名。
途中略
トリアノンでの夕餐のために、マリー・アントワネットは「真珠とヤグルマギク」の名で知られる花柄の食器セットを選んだ。1782年にセーブル磁器製作所が納めたこのセットは、295点の食器からなる傑作であり、 続きは省略」
「マリー・アントワネットは何を食べていたのか
ヴェルサイユの食卓と生活」より引用しました。
「マリー・アントワネットの食器セット 真珠と矢車菊」 王立セーブル磁器製作所
ベルサイユ宮殿美術館
「王妃はどんな花が好きだったのだろう。今日まで保管されている請求書をひもといてみよう。バラやヤグルマギクはもちろん、ヒヤシンスも大のお気に入りで、1784年には22種類の異なる色調の青ヒヤシンスの苗を132個、7種の赤ヒヤシンス72個、13の異なった色合いの白ヒヤシンス78個、瑪瑙(めのう)色のヒヤシンス36個、三種の黄ヒヤシンス36個を注文している。
「マリー・アントワネットは何を食べていたのか
ヴェルサイユの食卓と生活」より引用しました。
花をこよなく愛したアントワネットは、花に囲まれていることで落ち着くと語っています。
薔薇が好きで、庭園には沢山の薔薇の花を植えました。薔薇をはじめ、生涯4000枚以上の植物画を描いたルドゥーテ(1759-1840)は、アントワネットに植物画を教え、宮廷の蒐集(しゅうしゅう)室付き素描画家の称号を得たといいます。
薔薇が特に有名ですが、ヒヤシンスやチューリップ、アイリスなどもアントワネットが好んだ花で、王妃の私室の装飾テーマにもなりました。
「マリー・アントワネットの植物誌」
エリザベット・フェドー 著
アラン・バラトン 監修
川口健夫 訳
原書房 発行
「FETES GLANTES(ベルサイユ宮殿舞踏会)」の翌日、早朝から、ベルサイユ宮殿からプチ・トリアノンまでの庭園を歩いてみました。
フランスの紅茶ブランド「NINA'S」のオリジナルスパークリングワイン『ロゼ・ド・マリー・アントワネット』は、ベルサイユ宮殿の薔薇とリンゴを使ったマリー・アントワネットのお酒で、私がこれまで飲んだワインの中で一番美味しいと思ったワインでした。
Traders Market 公式サイトにある「ベルサイユ宮殿には、今でも「王の菜園」と呼ばれる菜園が残っています。その中で、マリー・アントワネットが愛した薔薇は、今でも自生を続けており、この薔薇に、ベルサイユで育ったリンゴを香りとして使用したスパークリングワインです」
という文章を読んで、確かめたいと思い、ベルサイユ宮殿に自生しているというアントワネットの薔薇を探しながら散策してみましたが、それらしい薔薇を見つけることはできませんでした。
陶磁器で作られた「ローブ・ア・ラ・フランセーズをまとったマリー・アントワネット」のフィギュア
「図説ヨーロッパ宮廷を彩った陶磁器 プリンセスたちのアフタヌーンティー」
Cha Tea 紅茶教室 著
河出書房新社 発行
より
マリー・アントワネットが愛される、魅力の5つ目は、「お洒落で美しいセレブな女性の頂点に立つ女性=アントワネットというブランド力」だと思います。
それでいて、野に咲く可憐な花の優しさも待ち合わせている女性だと思います。
次は、第5章 マリー・アントワネット 革命の渦の中へ